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30. Management 3.0 について考えている (1)

この記事について

とあるきっかけで Management 3.0 という本を読んだので、その感想を書き散らしておきます。

まだぜんぜん咀嚼しきれてないので、続編を書くかもしれません(書かないかもしれないけど)。

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前提

Management 1.0

トップダウン式で、マネジャーにすべての権限が集まっているマネジメント方式

Management 2.0

同じくトップダウン式だが、従業員満足のための施策が追加されたバージョン

Management 3.0

ネットワーク型で、上下関係のないマネジメント方式

昔は 1.0 だったが、現在は 2.0 が主流になり、(アメリカでは)最近 3.0 な組織が少しずつ生まれている、というかんじ。

感想

Management 3.0 が求められている背景というのは、2つあると思っていて、

  1. 変化の激しい環境の中でビジネスを効率よく着実に動かすため、変化に強い組織をつくる必要がある
  2. 雇用の流動性が高い職種のメンバーに少しでも長く在籍してもらうため、自律的で自己発展的な権力構造をつくる必要がある

1については、マネジャーによる中央集権的なワークプロセスでは、マネジャーが捌き切れないほどの情報過多によって質・スピードが低下してしまうので、コラボレータ(マネジャーでないひと)ひとりひとりが自ら戦略を考え、行動し、評価する(内省も含めて)、というワークプロセスにして、負荷を並列化・分散化しようという考え方が背景にあるんだと思う(まさにアジャイルな考え方)。

2については少し矛盾を感じていて、それは、自律性や有能性(自己決定理論による定義)を育む組織で成長した人間は会社に所属する必要がなくなるのではないか、というもので、Management 3.0 で組織を動かすために、個々のメンバーはもちろん成長する必要があるわけだけど、その先にあるのは離散なのではないか、という疑問。自分たちで組織を回せるようになったとき、会社に残り続けるモチベーションにはどんなものがあるだろう、という疑問。

質とスピードについても、ミクロではトップダウンでやった方が明らかに速いことが多いし、中央集権的な良さ、というのもそこかしこにあるので、Management 2.0 から 3.0 へバージョンアップする必要性って本当にあるの?(Windows 8 じゃないよね??)という心配、とか。

Practice

Management 3.0 のウェブサイトへ行くと、様々なプラクティスが紹介されている。

management30.com

Personal Maps

How to Improve Team Collaboration with Personal Maps

あまり知らないひとと、Personal Map を介してそのひとの人となりを知るのは楽しいし、有益だと思った。特に、values は、後に出てくる Motivation とともに、チームメンバーの相互理解において重要と感じた。

Delegation Board

How Delegation & Authorization Foster Employee Engagement

ちょっと長いけど、Management 3.0 (書籍)から抜粋

  • Level 1: Tell: You make decisions and announce them to your people. (This is actually not empowerment at all.)
  • Level 2: Sell: You make decisions, but you attempt to gain commitment from workers by “selling” your idea to them.
  • Level 3: Consult: You invite and weigh input from workers before coming to a decision. But you make it clear that it’s you who is making the decisions.
  • Level 4: Agree: You invite workers to join in a discussion and to reach consensus as a group. Your voice is equal to the others.
  • Level 5: Advise: You attempt to influence workers by telling them what your opinion is, but ultimately you leave it upto them to decide.
  • Level 6: Inquire: You let the team decide first, with the suggestion that it would be nice, though not strictly necessary, if they can convince you afterward.
  • Level 7: Delegate: You leave it entirely up to the team to deal with the matter while you go out and have a good time (or use that time to manage the system).

Appelo, Jurgen. Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn)) (p.128). Pearson Education. Kindle 版.

  • Level1 命令する:マネジャーが決定し、メンバーにそれを伝える(まったく権限付与しない)
  • Level2 説得する:マネジャーが決定するが、そのアイデアを売り込むことでメンバーからの信任を得ようと試みる
  • Level3 相談する:マネジャーは議論する前にメンバーからの意見を十分に参考にする。ただし、意思決定はマネジャーが行う
  • Level4 合意する:マネジャーはメンバーを議論に誘い、全員の意見として合意を得る。マネジャーとメンバーは平等である
  • Level5 助言する:マネジャーはメンバーに自分の意見を伝え、メンバーを動かそうと試みる。ただし、最終的にはメンバーが自分たちで決定を下す
  • Level6 尋ねる:マネジャーはまずメンバーに決定させるが、その際、補助的だが役に立ちそうな提案をする。意思決定後、メンバーはマネジャーに説明してもいい
  • Level7 委ねる:マネジャーは物事の処理を完全にメンバーに任せる。その間外出したり遊んだりしてていい(あるいはシステム自体の改善をするとか)

こうやって読むと Level6 はけっこうニュアンスを間違って捉えていた。ほぼ Level7 と同じだが、トリガーはマネジャーであることが伺える。

Delegation Board 作成のエクササイズを通して、Level 3 - Level 7 に収まっていれば、あとはモノによって前後してもぜんぜんいいんじゃないかな、という感想を持った。

意外と理想は 4,5,6 辺りに集中するんじゃないか、とか。

Salary Fomula

Management 3.0 Practice: Salary Formula

全従業員の給与を公開し、計算式と内訳を詳らかにするのは心理的ハードルが相当に高いと思う(個人的にはまったく抵抗はないが)。

また、何を係数に用いるか、という判断基準がひとによって異なるため、ここでコンセンサスを形成するのは骨が折れるかもしれない(実際、自分のチームでは議論が紛糾し、ついには計算式を完成させることはできなかった)。

現在の給与額から係数を導き出すのもナンセンスだろう(こじつけて不明瞭な係数ができてしまうのはけっきょく不透明性に繋がる恐れがある)。

透明性と情報格差の是正が Management 3.0 のキーワードであると思うので、これができないなら、Management 3.0 にはアップグレードできないと考えていいのではないか( 2.7 くらいまではいけそうだけど)。

The requirements for a good compensation plan are fairness, recruitment, flexibility, motivation, trust and effort.

Management 3.0 Practice: Salary Formula

Moving Motivators

Moving Motivators - Management 3.0

これもちょっと長いけど原文を引用する(めんどくさいから翻訳はなしで)。

  1. Make sure that people feel competent at what they are doing. Give them work that challenges their abilities but that is still within their grasp.
  2. Try to let people feel accepted by you and the group. Compliment them on their achievements (but only if you mean it).
  3. Make sure that their curiosity is addressed. Even though some activities can be boring, there should always be something new for them to investigate.
  4. Give people a chance at satisfying their honor. You must allow teams to make their own rules, which team members will follow happily (or sometimes grudgingly).
  5. Infuse the business with some idealism (purpose). You’re not just there to make money. You’re also making a (small) contribution to make the world a better place. (Note: Be careful with this one. It is often abused by top management in an attempt to obfuscate its real purpose, which is simply to make money.)
  6. Foster people’s independence (autonomy). Allow them to be different from other people, with their own tasks and responsibilities. And compliment them on their original and interesting hair style.
  7. Make sure that some level of order is maintained in the organization. People work better when they can rely on some (minimal) company rules and policies.
  8. Make sure that people have some power or influence over what’s happening around them. Listen to what they have to say and help them in making those things happen.
  9. Create the right environment for social contacts (relatedness) to emerge. There’s usually no need to venture into the romance area, but friendships can easily arise, provided that managers take care of a fertile context.
  10. Finally, it is important for people to feel that they have some status in the organization. They shouldn’t feel like dangling somewhere at the bottom of a big hierarchy.

Appelo, Jurgen. Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders (Addison-Wesley Signature Series (Cohn)) (p.81). Pearson Education. Kindle 版.

本書ではモチベーションというより欲求として紹介されていて、ヒトは欲求を満たすために何かをするわけで、その欲求が満たされないことによってストレスが溜まるから、できることならそうならないようにしたいよね、ということなんだけど、まぁ全員の欲求を満たす配置や仕事の分担はそうそうできなそうなじゃない?という現実的な見方もあるよね

余談:ミツバチのメタファー

ミツバチの組織が Management 3.0 である、というのは示唆的で、情報共有と予め計画された行動の2つの要素が、リーダー不要で変化に強い集団をつくっているというのは面白く、すべてをヒトの集団に当てはめることはできないが、ヒントにはなりそう。

Bee learning and communication - Wikipedia

Management 3.0 は一見カオス的ではあるが、実は行動様式を細かく規定するシステムなのではないか、という気がした(実際、フィードバックの仕方やミーティングの進め方には細かいルールがあった)。

まとめ

Management 3.0 の目指す世界は、並列化・分散化された似たようなプロセス(スレッド)の連続実行であり、まさにミツバチの集団である、というのが本質な気がしているけど、それが企業運営にとって理想の形態か、というのはまだだいぶ検証が必要な感じがしている。

「似たようなプロセス」というのはちょっと語弊があるなぁと思ったので補足。

最近、どういう仕事がコンピュータに置き換え可能か、ということをよく考えるのでこういう書き方になってしまった(Describe your context)。

けっきょく、ミツバチにマネジャーが不要なのは、DNA レベルで統制が取れているからで、それをヒトがやるためには、それに近い仕組みが必要なのではないか、と思ってしまった(List your observations)。

最近、ヒトと仕事することによる非効率性に打ちのめされることが多くて疲れてるのかもしれない(Express your feelings)。

Good things, Good practices みたいなものが浸透していくと、どう行動すべきかみたいに悩まなくてもいい文化ができるかもしれない(Explain the merit)。

「似たような行動規範を持つ有限状態機械」みたいなイメージかも(Offer your ideas)。

けっきょくのところ、「働く人たちがハッピーになること」が最終目標なので、いまハッピーか、もしハッピーじゃなければ、どうなるとハッピーになれるか、みたいな議論を深めた上で、じゃあどうマネジメントしていくのが自分たちにとってベストなのか、というのを探っていくのがいいんだろうな

おまけ

We said things like, why can't people set their own salaries? What do they need to know? There's only three things you need to know: how much people make inside the company, how much people make somewhere else in a similar business and how much we make in general to see whether we can afford it. So let's give people these three pieces of information. So we started having, in the cafeteria, a computer where you could go in and you could ask what someone spent, how much someone makes, what they make in benefits, what the company makes, what the margins are, and so forth. And this is 25 years ago.

Ricardo Semler: How to run a company with (almost) no rules | TED Talk | TED.com